地中海の島キプロスは、高速道路で結ばれた主要都市4つのほか、中小の町や村が点在し、海あり山あり高原ありで、史跡も教会も豊富な、魅力ある島です。
目次
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ニコシア/レフコシア リマソル/レメソス | |||
ラルナカ パフォス | |||
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キプロス島は、地中海に浮かぶ島、といっても、地図を見ればおわかりにように、西欧の一員であるイタリアのすぐ南にあるマルタと違い、地勢的には欧州というより中東です。北はトルコ、それもイスタンブールなどの西欧に近い側ではなく、もっと奥深いアジア・トルコです。東はレバノンやシリアなどの中東、南はエジプト、そして西は、地中海を真西に進めば、結構離れてはいますが、ギリシャの離島、クレタ島に当たります。アテネなどのあるギリシャ本土はそこから北西。民族的にはギリシャ系とトルコ系の両者混在です。言語は、ギリシャ系はギリシャ語、トルコ系はトルコ語、そして宗教は、ギリシャ系はギリシャ正教、トルコ系はイスラム教です。
近現代の流れを大雑把に言えば、国内的にはギリシャ系とトルコ系の人達は交じり合ってまあまあ仲良く暮らしていたようです。1960年まで82年間ほど、英国の植民地だったため、その間に英語が浸透しました。1960年に英国からの独立を果たし、キプロス島全体が新しい国家として出発しました。但し英国軍管轄地の一部などがイギリスの海外領土として残され、それは今日まで続いています。
ギリシャ系住民の間では、キプロスはクレタ島などと同様、ギリシャの島々の一つであるべきという考えもあるほどに、親ギリシャ寄りの国です。国内各地を旅行すると、実際あちこちにギリシャ国旗がはためいているのを目にします。仮にトルコ系住民がほとんどいなければ、今頃はギリシャの一部だったかもしれません。イギリスからの独立後もトルコ系住民との間で、小さなトラブルはあっても共存していました。しかし1974年、ギリシャ軍の支援を受けたクーデターが起こりました。トルコがこれに反応し、トルコ系住民の保護を名目に北からトルコ軍を送り込み、結果として国土が南北に分断されました。この時に、南に住むトルコ系住民は北へ追いやられ、北に住むギリシャ系住民は南へ追い出され、国土は完全に分断され、以来、何度となく再併合の話し合いがありつつも、合意に達せず今日に至っています。
これだけを読めば物騒な所のようですが、今は南も北も平和そのもので、治安も欧州有数の良さ。安心して旅行や滞在ができる国です。
南北分断というと、まさにニチアイのあるアイルランドを想起させますが、アイルランドの南北問題との違いをいくつかあげると、アイルランドでは民族は同一ながら宗教的な違い(プロテスタントとカトリック)が理由の一つで分断されていること、今のアイルランドは国境審査もなく南北自由往来ができ(但し目の前にブレグジット問題が控えてはいますが)、建前や感情はともかく、北アイルランドは完全・公式に英国の一地域として世界中から承認されています。これと比べると、キプロスの南北問題は複雑です。南キプロスはキプロス共和国として、EUにも加盟し、通貨もユーロとなり、完全に西欧の一部と同等の扱いになっています。この留学サイトでいうキプロスも、旅行ガイドその他一般にキプロスという場合も、国としてのキプロスといえば、南だけです。(アイルランドも国家としてのアイルランドを指す場合は北アイルランドは含まないことが多いので、その点では違わないのですが・・・)
では北キプロスとは何か。日本語での国名は、北キプロス・トルコ共和国。簡単に書くと、実質的に独立国家と変わらない一つの国のようでありながら、世界から承認されていない地域です。この意味では、台湾などが近いかもしれません。北キプロスを国家として承認しているのは、トルコただ一国だけ。北キプロスの言語はトルコ語、通貨はトルコリラです。南北キプロスの国境はどうなっているかというと、しっかり双方の側で出入国審査があり、国境を越えられるポイントも限られています。そして南北間にはまるで朝鮮半島よろしく、どちらの国にも属さない国連軍管理の緩衝地帯があります。この点、南北アイルランド間が小さな農道でも自由に行き来できるのとは大きく違います。
南キプロスに着いた観光客がレンタカーを借りると、そのレンタカーでは北キプロスには入れません。レンタカー会社に質問しても、絶対に駄目、無理と言われます。事故その他が起きても保険がきかないし、救援にも行けないのだそうです。また、北キプロスで有事が起きても、日本の外務省(大使館)が邦人保護をすることもできません。外交関係がないので、公人として立ち入ることができないのです。日本人だけでなく、欧州の人も同じです。ですので、南キプロスでは語学学校でも旅行ツアーでも、北キプロスには行きません。この点、語学学校の担当者と話をしてみましたが、個人の留学生が自己責任で行くのは止められないけれど、何かあると困るので、本音はあまり行ってほしくない、ということでした。だから学校主催の北キプロス・エクスカーションなども皆無です。北キプロスはそんな地域ではありますが、実は個人で行くのは至って簡単で、ビザも不要、治安も全然問題はありません。ただ、世界から孤立してしまったため、経済開発も大いに遅れており、観光客の受け入れ態勢も西側のようにスムーズではありません。しかしホテルもありますし、北キプロス内でレンタカーを借りることはできます(南への越境は不可)。
北キプロスについては、このような状況を基本知識として知っておいた上で、興味のある方はあくまで自己責任で行ってみて下さい。本サイトのキプロス留学は、単にキプロスと書いていても、南キプロスのことを指しており、この章の以上の記述を除けば北キプロスのことは含めていないとお考え下さい。ただ、誤解を避けるため、しばしば「キプロス共和国」と書いています。これが南キプロスのことです。
ニコシア/レフコシア (Nicosia/Lefkosia) キプロスの首都として、名前は多分一番有名ですし、人口もキプロス島最大です。キプロス島のほぼ中央にある内陸都市です。首都ですので文化施設も豊富で、博物館など多数の見所もあります。ただ、観光客が多い都市ではありません。欧州人にとって、キプロスの魅力はビーチや自然だからでしょう。それよりも、この首都こそが、南北キプロスの分断都市なのです。つまり、市街地のど真ん中を境界線が通っています。逆に言うと、ちょっとだけ北キプロスをのぞいてみたい人にとって、最適な場所です。パスポートを見せれば徒歩で簡単に北キプロスに入ることができ、30分でも1時間でも散歩してすぐ南へ戻ることができます。もちろん、それだけで北キプロス全体を理解できるわけではありませんが、ニコシア以外の北キプロスは、交通機関や言葉などの問題から、個人で行くには少々ハードルが高いので、まずニコシアで体験されることをお勧めします。
ニコシアの学校 → パスカル・エジュケーション
リマソル/レメソス (Limassol/Lemesos) キプロス第二の都市で、ニコシアのほぼ真南にある海浜リゾート都市でもあります。キプロスきっての豊かな都市でもあり、現状、語学学校もほぼこの都市に集中しています。集中といっても数えるほどしかなく、逆に言えば他の都市にはほぼありません。仮に将来、キプロス語学留学の人気が高まり、各地に語学学校が乱立するようになるとすれば、やはりここが一番多くなることでしょう。
リマソルの学校 → イングリッシュインサイプラス オスカーズ
ラルナカ (Larnaca) キプロス南東部の海浜都市で、人口では実質第三位の都市。キプロス島最大の国際空港がある都市なので、聞いたことのある方も多いでしょう。もともとは首都ニコシアの空港が最大だったのですが、ニコシア空港が南北分断で使えなくなってしまい、その代替として急遽整備されたという経緯があります。商工業がほどよく発展した町ですが、ビーチもあるし、何より国際空港があるため、観光客やリゾート客もそこそこ見られる都市です。語学学校はまだありませんが、将来キプロス留学がメジャーになれば、当然できそうな都市です。
パフォス (Paphos/Pafos) キプロス南西部の海沿いにある歴史ある小都市で、旧市街地が世界遺産に指定されています。またキプロス共和国で2つある空港の一つがあり、欧州内の短距離便ではラルナカ空港とさほど変わらない便数を維持しています。想像ですが、将来キプロス留学がメジャーになれば、ニコシアやラルナカよりは、沢山の語学学校ができる都市かもしれません。もちろん今はまだその気配もありません。
キプロスの公用語は、ギリシャ語とトルコ語です。ギリシャで話されているギリシャ語とはある程度違いがあるけれど、意思疎通が十分可能なレベルだそうです。トルコ語は公用語とはされていますが、ほぼ使われておらず、ギリシャ系キプロス人の大多数はほぼ理解できないし、誰も学びたいと思わない言語だそうです。
英語が実質的な第二言語ですが、マルタと違い、国家が定める公用語ではありません。けれども、実際に行って各地を回った実感としては、マルタとほぼ同じレベルで、国民の大多数がネイティヴかそれに近い流暢な英語を話します。ちなみにマルタでは英語は第二公用語です。
道路標識をはじめとした国内での表記は、公的なものの大部分はギリシャ語と英語の二ヶ国語表記ですが、田舎にいくほどギリシャ語だけの看板が目に付きます。逆に都市部では英語だけの表記が目立ちます。日本でも日本語なしの英語の表記の企業の宣伝などは結構見かけますから、日本より英語が通じるキプロスで、ギリシャ語を無視した表示があちこちにあっても不思議ではありません。
ただ、キプロス人同士の日常会話は、ほぼギリシャ語だけです。この点はマルタにおけるマルタ語も同様です。それでも、観光がメインでより国際化しているマルタに比べて、そうでない部分のすそ野が広いキプロスでは、普通に街を歩いていて英語を耳にするチャンスはやや少ないかなと思います。
ついでに言えば、アイルランドも第一公用語はアイルランド語で、英語は第二公用語ですが、これは完全に建前で、マルタともキプロスとも違い、日常生活はほぼ英語だけです。アイルランド語は学校教育の一部、特殊な場面やごく限られた地域の一部の人しか使わず、高校を卒業してしまえば死ぬまで使う機会がない、というアイルランド人が大多数です。
アイルランド、マルタ、キプロスという、元イギリス植民地の3つの島国は、それぞれに旧宗主国イギリスに対する様々な感情があり、英語の使用にも上記のような微妙な差があります。しかし、ある意味、反英感情が一番強そうなのがアイルランドなのに、言語に関しては最も英語化してしまっているのもアイルランドです。
結論としては、公用語かどうかといった形式的なことを抜きにすれば、一般のキプロス人の英語水準や使われ方は、マルタと大体一緒、と考えて差し支えないでしょう。
日本からキプロスへ
日本からキプロスへは直行便がありません。通常、ヨーロッパか中東の主要空港で乗り継いで行くことになります。いくつかの経由(乗り継ぎ)地はありますが、おそらくドバイ経由が最も便利でしょう。
イギリスからキプロスへ
元イギリスの植民地であるつながりからも、英語が通じる南国というイギリス人の保養地としても、キプロスとイギリスの人的往来は盛んです。ですから、イギリスからキプロスへは、ヨーロッパのほぼ端から端で4〜5時間という結構な時間がかかるにもかかわらず、直行便がかなりあります。ロンドンだけでなく、あちこちの地方空港からも、ラルナカとパフォスの両空港に便が出ており、格安航空会社も結構就航しているので、閑散期の安い便を狙えば、4時間以上のフライトとは思えない激安で行くこともできます。
キプロス内の交通
マルタ同様、鉄道やトラムなどはなく、国内の公共交通機関はバスとタクシーだけです。小さな島で人口密度も高いマルタでは、隅々までバス路線が網羅しており本数も多いですが、キプロスは都市間の長距離便は本数が少ないです。主要都市の市内バスはそこそこ走っており、渋滞もマルタやイギリス・アイルランドの大都市よりはいくらかマシです。上記で紹介しているキプロスの4都市間は、片側2車線の立派な無料高速道路で結ばれています。最高速度100キロですが、実質120キロぐらいで走っている車が多く、例えば南東のラルナカから南西のパフォスまでが142キロあり、1時間半程度で走破できます。日本、イギリス、アイルランド、マルタと同じで、車は左側通行です。マルタなどと比べれば比較的運転しやすいですし、都市以外の史跡や自然を巡るにはバスも不便ですし、レンタカーはヨーロッパ他国と比べても安いです。ですので、車の運転にある程度自信がある方は、国際免許をお持ちになり、車で一回りしてみると楽しいでしょう。実際、語学学校でクラスメートと数人でシェアして週末にレンタカーで一回り、というのは、皆よくやっているそうです。
ニチアイ Nichiai Ltd
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